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緑内障は開放隅角タイプと閉塞隅角タイプの緑内障に分かれます。
日本にける緑内障の約90%は開放隅角タイプの緑内障です。
逆に、閉塞隅角タイプは日本の緑内障の約10%しかいませんが、
このタイプは急激に眼圧が上昇してきて、
下手をすると一晩で失明するような緑内障発作をおこす可能性がある緑内障です。
現在でも、世界中で530万人がこの閉塞隅角タイプの緑内障で失明するといわれており、
いまだに東アジアの失明の主要疾患となっています。
日本でも約30年前には、このタイプの緑内障はレーザー治療ですぐに治ると思われていましたが、
現在では、レーザー治療の合併症の問題や、
レーザー治療だけでは治癒できない緑内障が多いことがすでにわかっています。
実は、閉塞隅角タイプの緑内障には、意外にも白内障手術が有効です。
緑内障なのに白内障手術?と思われるかもしれませんが、
閉塞隅角タイプの緑内障は、程度の差こそあれ、水晶体そのものがその眼圧上昇の原因になっているのです。
この閉塞隅角タイプの緑内障においては、
日本緑内障学会でも白内障手術を推奨していますし、
イギリスや東アジアの大規模調査でも、
従来のレーザー治療よりも白内障手術の方が経過がいいことが証明されています。
しかしながら、まだ全く緑内障や白内障を発症していない方や手術に抵抗がある方、比較的若い方では、
緑内障発作の予防のためにとりあえずレーザー治療で急場をしのぎ、
将来的な白内障手術に備えることは、今でも行います。
また、閉塞隅角タイプの緑内障を併発している方の白内障手術は、
通常の白内障手術に比べてやや手術が難しくなることは確かなため、
いざ合併症を起こした際の視力予後はよくないことが報告されています。
ちなみに、自分の目が閉塞隅角になりやすいタイプかどうかは、
外来の検査で簡単に判別することができますので、気になる方はお申し出くださいませ。
また、すでに閉塞隅角の方で、レーザー治療か白内障手術か迷っておられる方も、
是非ご相談くださいませ。
院長まつやま

2023-01-05 08:53:08
スギやヒノキの花粉飛散数は、前年の夏の気象条件と前年の春の花粉の飛散量に影響されます。
一般的に、日照時間が長く、気温が高いと、花粉飛散数が多くなります。
また、花粉が多く飛んだ翌年は、花粉飛散数が少なくなる傾向がみられます。
昨年のことを覚えておられますでしょうか?
昨年の6月は、全国的に梅雨が異常に短く、その分、日照時間がかなり長くなりました。
また、夏は高温を記録しています。
このような気象条件を反映して、中国地方では花粉の飛散傾向がやや多い予想となっています。
ちなみに、
関東や東海地方は場所によっては、昨年の3倍近くに達するところもあるそうです。
花粉飛散日とは、
「1cm2あたり1個以上の花粉が飛散した日が2日以上続いた時の最初の日」
と明確な定義があります。
つまり、1月からすでに少量のスギ花粉は飛散していることもあり、
敏感な方はすでに症状を発症している方もおられます。
ほおっておくと、重症化や慢性化することもありますので、
症状が出始めたら、早めの受診をおススメします。
院長まつやま

2023-01-04 18:29:34
お酒を飲むときに、いろいろな種類のお酒を飲むことを「ちゃんぽん」といいます。
ちゃんぽんをすると悪酔いや二日酔いをすると言われますが、
実際はどうなんでしょうか?
調べてみると、
「複数の種類のお酒を飲んだからといって、酔いやすくなる」
とするエビデンスはないそうです。
お酒に酔うのは摂取したアルコール量とその人のアルコール分解能に依存しています。
またお酒を飲むのにかける時間(いわゆる飲むペース)もその大事な要素となります。
つまり、飲みなれたお酒だけを飲む場合は自分の飲むペースを把握できているのに対して、
数種類のアルコール濃度のお酒を飲むときには、
自分でも飲むペースを把握しにくくなります。
また私自身もそうですが、酔いが進むとついついいい気になり、
さらに強いお酒をハイペースで飲んでしまいます。
当然、そのような時は通常の許容量以上のアルコールを摂取してしまい、
アルコールの分解能力を超えて悪酔いや二日酔いになってしまう、ということのようです。
考えてみれば当たり前のようですが、
お酒を飲む機会の多いこの季節、自分のアルコールの許容量や飲むペースを守って、
楽しくお酒を飲みたいものです。
院長まつやま

2022-12-15 14:48:41
加齢黄斑変性症は、現在、日本で失明原因の第4位を占める病気です。
もともと欧米では、失明原因の第1位を占める病気でしたが、
抗VEGF療法(抗VEGF抗体を眼内に注射する方法)が開発されてからは、
激減してきています。
それでも、一度症状が進行すると、まだまだ失明に至る症例も多いのが実情です。
そこで大事になってくるのが、加齢黄斑変性症の予防です。
加齢黄斑変性症には、いくつかの前駆病変が知られています。
物が歪んで見える症状で発症するのが一般的ですが、
症状が出る前であっても、眼底検査やOCT検査(目のCT検査)で簡単に診断することが可能です。
加齢黄斑変性症予防の三大要素は、禁煙、サプリメント、光の防御です。
喫煙者の病気のリスクは4倍になります。
また禁煙してからそのリスクが半減するまでは、10年もかかるといわれています。
サプリメントは、病気への進行が25%抑制されることが知られています。
また光の防御にはサングラスの着用のほか、
白内障手術の時に特殊に着色された眼内レンズを使用することなどがあげられます。
加齢黄斑変性症を発症すると、その反対眼にも5年以内に43%と高率に発症することが知られています。
できる限り、以上にお話した予防を行い、少しでもリスクを減らしておくことが大事です。
気になる方はご相談くださいませ。
院長まつやま

2022-11-29 16:19:36
平均寿命とは、今後、死亡状況が変化しないと仮定して、
その年に生まれた0歳児が平均で何歳まで生きられるかを予測した数値です。
2022年の平均寿命は、女性が87.57歳、男性が81.47歳でした。
2021年は、コロナの影響で10年ぶりに平均寿命が減少していましたが、
2022年は過去最高を更新しています。
ちなみに、その前に平均寿命が減少したのは、東日本大震災のあった2011年でした。
かつては、男女とも世界一の平均寿命でしたが、
現在は、女性は世界2位、男性は3位となっています。
ちなみに、女性では、平均寿命1位から3位は、香港、日本、スペイン、
男性では、1位から3位は、香港、スイス、日本となっています。
寝たきりになったりせずに生活できる寿命を健康寿命といいますが、
健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳です。
つまり、平均ではありますが、
男性で約9年、女性で約13年は介護生活をしていることになります。
この健康寿命を、どれだけ平均寿命に近づけることができるかが
今後の課題となります。
院長まつやま

2022-11-15 17:24:40
ハロウィーンはいつの間にか、日本では仮装大会として定着してしまいましたが、
本場アメリカでも子供が盛り上がる最もポピュラーなイベントのひとつです。
しかし、アメリカでもハロウィーンの仮装に凝るあまり、
目の色を変えるための仮装用コンタクトレンズ(CL)をする人が多くいます。
ある研究によると、美容用CLやカラコンの使用により、
角膜炎のリスクは16倍以上増加するといわれます。
そこでアメリカの眼科学会は、
ハロウィーンに先立って、仮装用CLを使用する際の注意事項を発表しました。
・仮装用や美容用のコンタクトレンズは、処方箋提出が必要な小売店や眼科医から購入すること
・購入の際は正規の処方箋を入手すること
・視力が正常であっても検査と処方を受け、「フリーサイズ」や「眼科受診の必要なし」といった宣伝文句を信用しないこと
・洗浄や消毒、着用の際は製品の注意書きに従うこと
・他人とレンズを共有しないこと
・異常を感じた時は使用を中止して、受診すること
などを推奨しています。
仮装用CLで目立ちたい気持ちもわからなくもないですが、
たかがコンタクトと高をくくっていると痛い目にあうこともあります。
大事な目のケアを優先していただけると幸いです。
院長まつやま

2022-10-31 13:11:00
ネコはイヌとともに、もっとも一般的なペットです。
ある統計によると、ネコの生涯必要経費は軽く100万円を超えており、まさにファミリーの1人です。
ネコにまつわる人間の病気としてもっとも多いのは、
ネコに寄生するノミによるノミ刺されです。
また、目にも関係するネコの病気と言えば、ネコひっかき病といわれる有名な病気があります。
名前は可愛いですが、症状は決して可愛らしいものではありません。
しかもネコの中でも、子猫にひっかれた時のほうがより発症しやすいとのことですので、
余計に厄介です。
症状としては、
受傷部位に一致した皮膚症状とリンパ節の腫れ、痛みなどですが、
これらは通常は数か月で治ります。
問題はその後です。
忘れたころに、目のかすみが発症してくることがあります。
原因はネコやそのノミに寄生する細菌です。
自然治癒したと思われていた細菌が、血液の流れによってに目に寄生し、
網膜や脈絡膜、視神経に炎症を起こすのです。
炎症の場所によっては、視力が低下したままとなってしまいます。
なんと、飼いネコの4割にこの細菌が感染しているとのこと。
ネコの口腔内にも細菌がいるとのことですので、むやみにネコにキスするのもアウトです。
心当たりがある方は、早めの治療が必要ですので、早めに受診してくださいませ。
院長まつやま

2022-10-20 14:03:05
花粉症は春のスギ花粉の飛散シーズンに発症する人が多く、
いまは、春の風物詩にもなっています。
ところが、秋が深まるこの時期にも、花粉症が流行します。
春の花粉症の原因は、主にスギやヒノキ、カバノキ科などの木の花粉です。
一方で、秋の花粉症の原因は、
イネ科の草やブタクサ、ヨモギ、カナムグラなどの草の花粉によります。
イネ科といっても、問題となるイネ科の草は田んぼに実っている稲ではありません。
花粉症の原因となるイネ科の植物はたくさんあり、
4~7月はカモガヤとハルガヤ、
6~8月はギョウギシバ、
5~8月はオオアワガエリ、
8月~9月はアシやススキなどのイネ科の花粉が多く飛散します。
しかし、もっとも多くの原因となる秋の花粉症は、ブタクサやヨモギです。
これらは日本全国に発生する植物であり、9~10月に飛散のピークを迎えます。
ブタクサはキク科の一年草で、原産は北アメリカであり、
黄色くて小さな花を大量につけます。
実際に、原産地である北米大陸では、花粉症といえばブタクサがメインであり、
全人口の5~15%がブタクサ花粉症との統計もあるそうです。
一方のヨモギはキク科の多年草で、日本全国に自生しています。
昔から、草餅の材料に使われたり、お灸のもぐさや漢方の原料にもなっていますが、
この時期には花をさかせ、多量の花粉を飛ばします。
また、あまり聞きなれないかもしれませんが、カナムグラも有名です。
長くつるを伸ばし周囲に絡みつき、辺り一面を覆ってしまうほど、繁殖力が強いとされています。
いづれも症状は、アレルギー性結膜炎やアレルギー性鼻炎として現れてきますので、
春の花粉症と同様の所見が出てくる場合には、点眼や内服による治療が必要となります。
院長まつやま

2022-10-07 09:30:27
ドライアイは世界でもっとも患者数の多い眼疾患といわれています。
また、高齢者になるほどドライアイの有病率が高くなることが知られています。
実際に、日本での調査では、高齢者の7割以上がドライアイと診断されています。
また、最近はパソコンを使って仕事をする人が多いため、
いわゆるVDT症候群に伴うドライアイも問題となってきています。
ある調査では、VDT作業者のドライアイかその疑いの人は、
男性で6割以上、女性で7割5分以上にものぼるそうです。
さらに、最近ではスマホ依存が問題となってきていますが、
高校生を対象としたドライアイ有病率に関する調査では、
男子で4%強、女子で8%も存在しており、
若者でもドライアイが増加してきている可能性が指摘されています。
ドライアイは単に目の違和感だけにとどまらず、
重症になると、仕事の欠勤などの労働生産性の低下につながります。
とある試算によると、ドライアイによる社会的損失は、
1人で年間60万円以上にもなるといわれています。
目に違和感がある方や疲れやすい方は、一度、ドライアイのチェックをされてみてください。
院長まつやま

2022-09-27 15:57:19
現在、日本では糖尿病患者が急激に増加してきています。
平成28年度の調査では、糖尿病が強く疑われる患者は全国で約1000万人となっており、
実に成人の11人に1人が糖尿病患者であることを示しています。
また糖尿病の目の病気である糖尿病網膜症に限っては、約300万人の患者がいると推計されています。
最新の視覚障害の原因の統計では、
1位が緑内障
2位が網膜色素変性症
3位が糖尿病網膜症
となっています。
また糖尿病網膜症の視覚障害の多くは、働き盛りの世代に集中しており、
これがまた社会問題になっています。
糖尿病網膜症は進行すればするほど重症度も加速することから、
糖尿病網膜症による視覚障害を減少させるには、
まずは糖尿病患者の眼科受診率を向上させることしか手はありません。
糖尿病網膜症のリスク因子に関しては、
網膜症がない人は、糖尿病に罹った期間、HbA1c、血圧、
また網膜症がすでにある人はHbA1cとなっています。
例えば、HbA1cが7%未満の患者と比較すると、
7%~8%の網膜症発症リスクは2倍、
8%~10%のリスクは3.5倍、
10%以上は7.6倍
になることが明らかとなっています。
また年齢や肥満度、腎機能も影響するほか、重症低血糖の有無も影響しやすいとされています。
つまり、網膜症の治療は眼科でしかできませんが、
網膜症の発症と進行を食い止めるには内科の先生の協力なくしては成り立たないのです。
現在は、外来に糖尿病手帳を持参していただく患者さんも増えてきました。
そこには、HbA1cだけでなく、血圧、腎機能、体重の記載欄もあります。
糖尿病に対しては、内科医と眼科医で協力して、治療していくことが大事です。
院長まつやま

2022-09-10 08:45:49