医療のトピック
医療のトピック
網膜静脈閉塞症は、網膜の血管の病気としては、糖尿病網膜症についで2番目に多い病気です。
日本での統計では、網膜の一部が閉塞する網膜静脈分枝閉塞症は50人に1人、
網膜の全体が閉塞する網膜中心静脈閉塞症は500人に1人と言われています。
先月発表された最新の論文では、網膜静脈閉塞症と脳卒中のリスクについて報告されています。
8万人以上の患者を6年間にわたり調査した大規模な報告です。
その報告によると、網膜静脈閉塞症の患者は、約1.73倍も脳卒中になりやすいとのことでした。
この傾向は、特に50歳未満の患者でより顕著になるとのこと。
網膜静脈そのものは脳血管の分岐ですので、
網膜静脈におこった病変が脳動脈にも起こりやすいことは理解しやすいと思いますが、
予後が大きく異なるだけに、予防が大切となります。
網膜静脈閉塞症の患者さんは、目の治療はもちろんのこと、脳卒中の予防にも取り組む必要があります。
院長まつやま

2022-05-13 18:03:24
通常の近視はメガネで視力を矯正することができるので、
これまではあまり問題とされてきませんでした。
しかし近年は、これまでのデータの蓄積から、
近視そのものが目の病気に与える影響が大きいことが分かってきており、
病的近視という概念がでてきました。
近視は、大きく分けて、軽度近視、中等度近視、高度近視に分類することができます。
それぞれの近視の程度と目の病気のかかりやすさを比較した統計によると、
軽度近視、中等度近視、高度近視の順に、
白内障では、2倍、3倍、5倍もなりやすく、
緑内障では4倍、4倍、14倍もかかりやすいことがわかっています。
また網膜剥離では、それぞれ、3倍、9倍、22倍と、近視が進行すればするほど病気のかかりやすさが加速し、
近視性黄斑症に関しては、2倍、10倍、41倍にも罹りやすさが上昇することがわかっています。
したがって、近視が進めば進むほど、これらの病的近視に対して、
定期的な検診などのケアをする必要があります。
また、近視進行の機序がすべて解明されているわけではありませんが、
小児期の進行が早い近視は、将来的に高度近視に進行する割合も高くなってきます。
できれば小児期に近視の発症や進行を予防できれば、それに越したことはありません。
院長まつやま

この記事は2020年のブログを再編集したものです。
2022-04-26 10:49:52

春分を過ぎ、徐々に日が長くなってきました。
それと同時に、これからの時期は、
1年の中でも最も紫外線が強い時期となってきます。
紫外線は、皮膚がんだけでなく、加齢黄斑変性症や白内障など、
失明につながる眼疾患のリスクも高めます。
世論調査では、眼に対する紫外線の影響について、
ほとんど認識していない方が多いようです。
アメリカでは、眼科学会が主導して、国民に提言を行うことが度々あります。
これは、紫外線から眼を守るために、アメリカ眼科学会が行った提言です。
1)100%UVカットのサングラスを着用する。
2)つばの広い帽子をかぶる。
3)曇りの日でも紫外線は強いので油断しない。
4)光感受性を高める作用のある薬剤を服用している場合は、特に紫外線対策に気を配る。
5)コンタクトレンズのUVカット性能を過信せず、サングラスを併用する。
6)水面、路面、ビーチの砂浜などからの照り返しに注意する。
是非、これからの時期の参考にされてください。
院長まつやま
この記事は2019年のブログを再編集したものです。
2022-04-18 14:32:27

今年も春の花粉症のために、アレルギー性結膜炎の患者も増えてきていますが、
4月に入ってから再びアレルギーのピークが来ているように感じます。
アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎は一般的に花粉症として知られていますが、
実は花粉以外にもさまざまなものがアレルギーの原因となりえます。
病院の採血でアレルギーを調べる場合には、
季節の花粉に加え、ホコリ、ダニ、昆虫、イヌ、ネコなどのアレルギー抗原を検査しますが、
そこにはPM2.5や黄砂の項目はありません。
PM2.5や黄砂は、花粉よりもはるかに小さな粒子であり、
中国から偏西風に乗って飛散してくる過程で、その表面にさまざまな化学物質が付着しています。
主にはこれらの化学物質がアレルギーをひきおこすと考えられています。
4月は1年の中で最もPM2.5や黄砂が飛散しやすい時期です。
特に飛散の多い九州地方では、天気予報の際に、毎日PM2.5の飛散予報を各局が放送するくらいです。
また、もともと花粉症を患っている方は、
PM2.5や黄砂の飛散により、症状が増悪することが報告されています。
PM2.5や黄砂の飛散状況や飛散予報は、随時、インターネットで確認することができますので、
花粉症がなぜか増悪してきているように感じたら、ぜひチェックしてみてください。
院長まつやま
2022-04-08 08:59:37

この時期、日本人が愛してやまないサクラの代表、ソメイヨシノ。
今まさに満開をむかえているソメイヨシノのゲノムがやっと解読されたのは、つい3年前のことです。
複雑とされるヒトのゲノム解読ですら、すでに2003年に終了宣言がだされていますが、
意外にも、ソメイヨシノのゲノム解読には相当な時間がかかったそうです。
もちろん、その需要がなかったわけではありません。
解読に時間を要したのは、後に解ったことですが、
ソメイヨシノそのものがふたつのサクラの交雑種だったためです。
しかし、そのおかげで、ソメイヨシノのもともとの親種も特定することができました。
また、ソメイヨシノのそれぞれの時期の遺伝子発現を解析することで、
正確な開花時期の予測や、新しい品種の開発にも役に立つとのこと。
これも科学の進歩といえばそれまでですが、
季節の移り変わりを様々な自然の変化で感じとる繊細な心を持ち合わせる日本人としては、
サクラの開花時期くらいは科学の予測に頼らず、自分の目で確かめながら楽しみたいものです。
院長まつやま
この記事は2019年のブログを編集したものです。
2022-04-04 10:16:28

コンタクトレンズを装用しているとアレルギー性結膜炎が増悪することが知られています。
これはアレルギー性結膜炎の原因となっているほこりや花粉等が
コンタクトレンズの表面に吸着し、常に目の表面を刺激するからです。
左の写真は、実際に表面に花粉が吸着しているコンタクトレンズの拡大写真です。
頻回交換のソフトコンタクトレンズでは、そのたびに取り替えるので特に問題ありませんが、
そうでないタイプのソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズでは、
この表面についた花粉が常に目の粘膜を刺激するため、
アレルギー性結膜炎が増悪します。
専用の洗浄液にてよく洗い、原因を除去することが大切です。
ちなみに、通常の抗アレルギー点眼はコンタクトレンズ上から点眼することが可能ですが、
症状が強いときに使用するステロイド点眼や免疫抑制剤の点眼は
コンタクトレンズ上からは点眼できませんので、
コンタクトレンズを装用する2分~5分以上前か、家に帰ってからはずした後に点眼する必要があります。
院長まつやま
この記事は2018年のブログを編集したものです。
2022-03-28 08:57:17
今年は、昨年よりは花粉の飛散量が少ないといわれていますが、
それでもそれなりに花粉症に苦労している方が多いように感じます。
毎年、1月から4月におこる季節性アレルギー性結膜炎は、
スギやヒノキの花粉によるものです。
スギ花粉は年初から飛散が始まり、3月から4月にかけてピークを迎えます。
またヒノキの花粉は3月から5月頃まで飛散します。
これらの花粉には、飛びやすい日や時間帯があることが知られています。
晴れていて気温が高い日、湿度が低く風の強い日、
雨の日の翌日などは、花粉の飛散量が増加します。
また1日の中でも、11時から15時頃の昼前後や、夕方から日没後にかけては、
花粉が多く飛散しやすいと言われています。
日本人の約5人に1人が目のかゆみを伴うと言われ、
その中の多くの方が鼻水や鼻詰まりを合併しています。
また頭がボーとして集中できない、口やのどが渇く、全身がだるい、などの全身症状を伴うこともあります。
特に喘息やアトピー性皮膚炎を伴っていると症状が増悪しやすいので、注意が必要です。
予防としては、ゴーグル型の眼鏡やマスクの着用、空気清浄機の使用、
洗濯時の乾燥機の使用、使い捨てコンタクトレンズの使用などがあげられます。
それでも症状が出る方は、おくすりに頼らざるを得ませんので、
受診のうえ、症状にあった点眼、内服、点鼻薬を処方をすることとなります。
院長まつやま
この記事は2019年のまつやま眼科ブログを再編したものです。
2022-03-26 09:00:55

「赤ワインは体にいい」とよくいわれます。
これは実際に1990年代に発表された論文をエビデンスにしています。
もともとヨーロッパではチーズやバターなどの乳製品を食べる習慣があるため、
心疾患や脳梗塞のリスクが高いとされてきました。
ところが、なぜかフランス人だけは、それらの疾患リスクが少なかったため、
赤ワインのおかげではないか、といわれたのです。
これの説は、フレンチ・パラドックスといわれます。
パラドックスとは逆説を意味する言葉ですが、
フランス人に疾患が少なかったのは赤ワインのおかげだ、という話になったのです。
これを機に、日本でもポリフェノールのアンチエイジング神話とともに、赤ワインが大人気となりました。
ところが、今やこの説は否定されつつあります。
もともと心疾患や脳梗塞のリスクは乳製品のせいではなく、
肉やマーガリンなどによる脂肪酸の影響である可能性が高いことがわかってきたのです。
また、赤ワインに限らず、適度の飲酒がそれらの疾患リスクを軽減し、
過度の飲酒ではリスクが上昇することもわかってきました。
さらには、心疾患のリスクは赤ワインと白ワインで変わりなかったとする論文もでてきました。
これからの季節、歓送迎会でお酒を飲む機会も増えるかと思いますが、
赤ワインに期待するほどの効果がないにせよ、楽しくお酒を飲みたいものです。
院長まつやま
この記事は2018年のまつやま眼科ブログを再編したものです。
2022-03-22 17:01:27

2018年に、日本人の中途失明原因の最新の統計が報告されました。
1位は緑内障(28.6%)、2位は網膜色素変性症(14.0%)、3位は糖尿病網膜症(12.8%)、
その後、黄斑変性症(8.0%)、脈絡膜萎縮(4.9%)と続きます。
ちなみに10年前は1位が緑内障、2位が糖尿病網膜症、3位が網膜色素変性症でしたので、
この10年で、糖尿病網膜症での失明患者が減ったことが大きな変化かと思います。
これは眼科医と内科医にとっては非常に喜ばしいことです。
確かに我々眼科医が重症の糖尿病網膜症の患者さんをみる機会は激減しました。
これは、内科領域での糖尿病治療の進歩に加え、内科医の啓蒙活動やマメな眼科紹介が功を奏した形かと思います。
時代とともに病気のトレンドも変化していきますが、
我々ドクターも、常に病気のトレンドをはじめ、それらの診断・治療にタッチアップしていく必要があります。
院長まつやま
この記事は2018年のまつやま眼科ブログを再編したものです。
2022-03-16 08:43:57