私たち日本人が一般的に茶目と呼ぶ虹彩は、人によって生まれつき部分的に欠損していたり(ぶどう膜欠損)、虹彩がまったく育たなかったり(無虹彩症)、外傷によって虹彩が損傷され、断裂している人がいます。
このような人に行う人工虹彩移植は、通常は白内障手術と同時に行い、人工虹彩を本来の虹彩の裏側に移植するため、角膜への影響も少なく、術後のまぶしさの軽減や視力の向上に寄与します。
しかし中には瞳の色に対するコンプレックスが強いあまり、瞳の色を根本的に変えたいという美容目的のためだけに人工虹彩を移植しようとする人もいます。この美容目的の虹彩移植はシリコン製の人工虹彩を本来の虹彩の前に移植し、虹彩を覆うように位置を調整するために角膜への影響が強く、術後に角膜内皮障害をはじめ、視力低下、眼内圧上昇、白内障、虹彩およびその周囲の炎症、失明などの合併症を起こすことが報告されています。
実際に2012年に虹彩移植の合併症患者7人14眼を検討した調査では、白内障(9眼)、緑内障(7眼)、インプラント除去術中の出血(1眼)等の合併症が見られ、最終的に6眼に角膜移植を、また7人14眼全員に人工虹彩の除去を必要としたとのことです。
現在では瞳の色を変える選択肢としてカラコンもあるため、人工虹彩移植を整形手術の延長のように安易に考えるのではなく、術前に瞳の色と視力とどちらが大事なのかをしっかりと考えてほしいものです。
院長まつやま
2019-03-20 08:56:25
医療のトピック