近視の中でも眼軸長の異常な延長を示す「強度近視」は、
網膜剥離や黄斑下出血、緑内障、白内障、網膜変性症などを引き起こす原因となります。
強度近視の患者は日本、中国、シンガポールを含むアジア地域に多く、
他の地域における有病率と比べるとかなり高いことが知られています。
近視の有病率は世界中で急激に上昇しており、
統計的には、2050年までに世界人口の約半分にあたる約50億人が近視を発症し、
約10%にあたる約10億人が強度近視となることが予想されており、
10人に1人が近視から失明のリスクを抱えることとなります。
近視は遺伝要因と環境要因とが複合的に関与して発症する多因子疾患と考えられています。
これまでにも多数の遺伝子解析の研究が実施されてきましたが、
まだ見つかっていない近視の遺伝子が多く存在することが示唆されています。
近視の発症・進行に関与する遺伝子を同定するため、
日本・シンガポール・台湾の3か国による共同研究が実施され、
強度近視を対象に遺伝子解析が行われました。
その結果、疾患感受性遺伝子を9つ同定したことが、この5月に報告されました。
これらの複数の遺伝子の発現量の変動が、近視の発症・進行に有意な影響を与えているとのこと。
将来的に、近視を発症するリスクや近視発症後の進行度を予測できれば、
近視の発症・進行予防への早期取り組みが可能となります。
これらは医学的・社会的価値が大変高いと考えられるため、
この発見が近視の発症メカニズムおよび病態の全容解明の一助となることが期待されます。
院長まつやま
2020-07-25 08:42:07
医療のトピック