白内障手術は、日本で年間130万眼以上も行われており、
手術手技や機器、眼内レンズの進歩により、術後早期から良好な視力が得られるようになってきました。
白内障手術後の老視対策は、現在、残された大きな課題のひとつです。
その解決策のひとつが、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術です。
2008年に多焦点眼内レンズが先進医療になってから、すでに10年以上経過し、
患者さんが選択することのできる多焦点レンズの種類も増えてきました。
しかしながら、最近は、多焦点眼内レンズの利点ばかりが強調される傾向があるため、
術後の不満例が一定数、存在することも事実です。
実際に、日本白内障屈折矯正手術学会が行ったアンケート調査を見てみると、
以下のように報告されています。
まず、白内障手術を受けられた患者さんの背景ですが、
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術をうけた患者さんの平均年齢は65.2歳で、
両眼とも多焦点眼内レンズを挿入された方が76%でした。
挿入された多焦点眼内レンズの種類をみてみると、
半数の方が焦点深度拡張型の眼内レンズを選択していました。
術前に眼合併症があった方は13%であり、
その内訳は、緑内障が29.2%、ドライアイが27.0%、角膜屈折矯正手術後が11.2%でした。
これらの患者さんへのアンケート結果では、
「不満」または「大変不満」と回答した人が、4%おられました。
これらの不満例のうち、最も満足度に関連したのは、「術後のかすみやコントラスト感度の低下」でした。
また、その次に、関連したものは、「術後の遠方視力への不満」、「術後グレア」でした。
「術後の近方視の満足度」は手術全体の満足度には関与していませんでした。
また、術後の満足度に関与する、術前因子はみつかりませんでした。
これらのデータからは、
術前のデータや問診結果からのみでは、術後の不満例を回避することは困難であることがわかります。
多焦点眼内レンズ使用の際には、その利点と欠点について、
術前にしっかりと説明をし、納得されたうえで、手術をうけることが重要であることが、改めて認識されました。
院長まつやま

2021-04-06 08:51:47
医療のトピック